書棚からのコーナー
H18.3.11
 雅楽に関する本の紹介をいたします・・・

     
陳 舜臣著  「九点煙記」  中国史十八景    講談社  昭和55年

 十八話の中国史 点景のなかで、第三景に雅楽曲 「蘭陵王」のことが書かれています。
ご存じの通り「蘭陵王」は、古代中国の実在の人物で、六世紀後半、南北朝末期 北朝系
北斉の 高 長恭(コウ チョウキョウ)という皇族で、戦に優れた武人で有りました。
 その容貌が柔和で婦人のようであったために、合戦の度に味方の志気が上がらず敵を
威圧出来ないという致命的な欠点がありました。そこで、醜い仮面を着けて戦に臨み勝利
した・・・と、故事に有ります「蘭陵王入陣曲」はそれに由来しております。

 本を読み進めていくと、北斉は時に北周に攻め込まれ、外地に赴任中の長恭は急きょ
帰城・・・・しかし、敵味方入り乱れた戦ゆえ、長恭の声が届かずに苦戦を強いられておりま
した。そこでやむなく被っていた兜を外したところ、長恭の美貌を見知っている味方の確認
によって戦に勝利した・・・と言うことです。
 一方では美貌ゆえに仮面を着け、また一方、史実では兜を外した・・・
その時に味方軍が歌った歌が「蘭陵王入陣曲」であります。
 結局、蘭陵王 長恭は従弟の皇帝に殺されてしまうのですが、その美貌や、金庸城での
見事な勝利、入陣曲の流行など、義経伝説のようなことがいつの時代でもあったようです。
長恭の姿が義経と重なり、人の世の無情を感じてしまいます。

 話が前後しますが、「蘭陵王入陣曲」は史実の中でのみ見られますが、以外と早くに中国
では廃れてしまいます。ですが、唐の時代あたりまでは伝承されていて、日本から渡った
遣唐使生たちが我が国に伝え、千数百年たった現在にまで伝えられているとは、雅楽や歴史
の奥深さにため息が出てしまいます。

 この「九点煙記」はすでに絶版になっておりますが、中国の歴史にご興味がある方には、
お薦め致します。

                         雅楽雅鳳会会誌「みやびね」第六号より抜粋
                                               雅鳳会事務局