書棚からのコーナー | |
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雅楽に関する本の紹介をいたします・・・ 陳 舜臣著 「九点煙記」 中国史十八景 講談社 昭和55年 十八話の中国史 点景のなかで、第三景に雅楽曲 「蘭陵王」のことが書かれています。 ご存じの通り「蘭陵王」は、古代中国の実在の人物で、六世紀後半、南北朝末期 北朝系 北斉の 高 長恭(コウ チョウキョウ)という皇族で、戦に優れた武人で有りました。 その容貌が柔和で婦人のようであったために、合戦の度に味方の志気が上がらず敵を 威圧出来ないという致命的な欠点がありました。そこで、醜い仮面を着けて戦に臨み勝利 した・・・と、故事に有ります「蘭陵王入陣曲」はそれに由来しております。 本を読み進めていくと、北斉は時に北周に攻め込まれ、外地に赴任中の長恭は急きょ 帰城・・・・しかし、敵味方入り乱れた戦ゆえ、長恭の声が届かずに苦戦を強いられておりま した。そこでやむなく被っていた兜を外したところ、長恭の美貌を見知っている味方の確認 によって戦に勝利した・・・と言うことです。 一方では美貌ゆえに仮面を着け、また一方、史実では兜を外した・・・ その時に味方軍が歌った歌が「蘭陵王入陣曲」であります。 結局、蘭陵王 長恭は従弟の皇帝に殺されてしまうのですが、その美貌や、金庸城での 見事な勝利、入陣曲の流行など、義経伝説のようなことがいつの時代でもあったようです。 長恭の姿が義経と重なり、人の世の無情を感じてしまいます。 話が前後しますが、「蘭陵王入陣曲」は史実の中でのみ見られますが、以外と早くに中国 では廃れてしまいます。ですが、唐の時代あたりまでは伝承されていて、日本から渡った 遣唐使生たちが我が国に伝え、千数百年たった現在にまで伝えられているとは、雅楽や歴史 の奥深さにため息が出てしまいます。 この「九点煙記」はすでに絶版になっておりますが、中国の歴史にご興味がある方には、 お薦め致します。 雅楽雅鳳会会誌「みやびね」第六号より抜粋 雅鳳会事務局 |
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